記事の内容
私は、よくフィリピンに旅行に行きます。
その時に気付いたのですが、フィリピンに行った時は、「他人にお金をあげる回数」が大幅に増えます。
日本にいる時は、「他人にお金をあげる機会」は、せいぜい、年に1回あるかないかです。
でも、フィリピンでは週に2、3回はあります。
「あれ、それは何でだろう?」と疑問に思ったので、その理由を考えながら、富の再分配について考えてみました。
私がフィリピンで寄付をする理由
私がフィリピンに行った時には、よくお金を人にあげます。
週に2、3回は寄付をしています。
対象は千差万別で、タクシーの運転手、ウエイトレス、家がない人など、マチマチです。
とはいえ、大した額ではなく、一回に100円、200円ぐらいです。
なぜ、私はフィリピンでは「寄付をしよう」と自発的に思うのでしょうか?
その理由は、主に以下の4つです。
私以外にも、フィリピンでお金をあげる人達はいると思いますが、概ね、このような理由だと思います。
寄付をする理由
- 相手が明らかにお金を持っていないことが理解できるから
- 相手が可哀想だから
- いつか、相手に助けて貰えるかもしれないから
- 寄付をして、相手から感謝されることが嬉しいから
これら4つの理由について、もう少し深堀りして説明します。
明らかにお金を持っていないことが理解できるから
フィリピンでも最低賃金は決まっているのですが、その水準はおおよそ、日給800円です。
日本と違って時給800円ではありません。
一日、働いて800円です。
そして、人が溢れているフィリピンでは、単純作業の労働者の賃金は、最低賃金になってしまいます。
タクシー運転手、ウエイトレス、レジ係など、そういった人達は、たったそれだけのお金しか貰えません。
しかも、保険などにも入っていないこともあります。
可哀想だから
フィリピンの街中には、浮浪者が普通に歩いています。
中でも見ていられないのは、小さい子供を抱えているシングルマザーの浮浪者です。
そういった人達を見たら、私だけでなく、多くの日本人は自然に寄付をしたいと感じるはずです。
いつか、助けて貰えるかもしれないから
フィリピンでは、相手から恨みをかうと殺されてしまいます。
これは、冗談ではなく事実です。
フィリピンでは、2013年〜2015年にかけて、韓国人が31人も殺されています。
その理由は何らかのトラブルのようですが、簡単に言えば、「ムカついたから」という理由です。
韓国人を嫌いなフィリピン人は、少なくありません。
一方で、日本人を好きなフィリピン人は、多くいます。
些細な金額で、親日感情を維持して貰えるなら、安いものです。
寄付をして、感謝されることが嬉しいから
お金をあげると、大抵は、相手からお礼を言われます。
お礼を言われることは普通に嬉しいものです。
私が日本では寄付をしない理由
次に、私が日本ではあまり寄付をしない理由も説明します。
寄付をしない理由
- 明らかに貧困に見える人が少ないから
- チップの文化がないから
明らかに貧困に見える人が少ないから
日本では、浮浪者の数は少ないですし、いたとしても独り身の浮浪者です。
また、行政に助けを求めれば、大抵の場合は助けてもらえます。
それらを考慮すると、「私が寄付をする必要性」をあまり感じられないので、寄付をすることを躊躇してしまいます。
チップの文化がないから
日本ではチップの文化は、一般的ではありません。
そのため、「チップです」と言って、相手にお金を渡しづらいです。
日本とフィリピンの富裕層の比較
こうして、「寄付したくなる理由としない理由」を並べて見ると、2つの社会の大きな違いは、「明らかな貧困が存在しているのか、していないのか」という点に尽きます。
日本にも、「明らかな貧困」が存在していれば、きっと私も含めて、多くの人達が寄付をするはずです。
では、なぜ、日本には貧困がなくて、フィリピンには貧困が存在しているのでしょうか?
その理由は、2つの国の「富の再分配の方法」が異なるからです。
「フィリピンは発展途上国だから、貧困が多い」と思っている人もいるいるかもしれません。
それも一つの事実かもしれませんが、決してそれだけの理由で片付けられる話ではありません。
なぜ、そう思うのか?
日本とフィリピンのGDPや、富裕層の数を比較してみます。
日本 | フィリピン | |
GDP | 約530兆円 | 約34兆円 |
1,000億円以上の富裕層 | 45人 | 18人 |
GDPでは15倍以上の差がありますが、1,000億円以上の富裕層の人数は2.5倍の差しかありません。
これは、富裕層に富が集中していることの証です。
もし、この富の偏在を直したならば、フィリピンにあるもっと多くの貧困が救われることは言うまでもありません。
異なる2つの国の再分配の方法
次に、日本とフィリピン(アメリカ型)の再分配の方法を説明します。
日本
日本では多くの人が、「経済格差を解消するのは、国の役割です」と考えています。
累進課税でお金持ちから高額の税金を取って、国が貧しい人にお金を渡す。
税制や社会保障制度によって、富を再分配することが、正しい方法だと日本人は当たり前のように思っています。
そのため、個人間の助け合いである寄付は、なかなか行われません。
フィリピン
フィリピンでは、「経済格差は、家族か個人で助け合って乗り越えるもの」と考えています。
そして、その思想が福祉や社会保障制度の代わりになっています。
だからこそ、多くの人が道端にいる浮浪者に寄付をします。
また、フィリピン人は家族愛が強いことで有名ですが、家族の絆から外れると社会保障から外れてしまうことも理由の一つだと、私は考えています。
フィリピンでは、20代の女性が一家の大黒柱であるケースも珍しくありません。
その場合には、家では、その女性がかなり強い立場になります。
日本のように、いつまでも年配の方の立場が強いということはありません。
どちらの方式がいいのか?
日本のように、政府が再分配を担っている国では、「格差意識」があまり顕在化しません。
多額の税金を払っている人は、「人を助けている」とは感じませんし、福祉を受けている人も、「人に助けてもらっている」とは感じません。
福祉を受けている立場の人、例えば老人は気兼ねなく年金を受け取ることができます。
反対に、子供が親に年金を渡していたとしたら、「親は毎月、子供にお礼を述べることになるはずです。」
両方のケースで、メリットとデメリットを考えてみます。
日本型
日本型のメリット
- 福祉を受ける人が、気兼ねする必要がない
- 老若男女、あまり関係なく、一定の条件を満たせば福祉を受けられる
日本型のデメリット
- 福祉を受ける人が、他人との関わりがなくなり孤立しやすい
- 福祉を受けたい人が増えると、システムが破綻する
- 福祉を受けているのに謙虚な気持ちにならないので、自分の立場を勘違いしてしまう
- お金を払っている側は、感謝して貰えない
- お金を稼ぐためのモチベーションの一つが失われる
- 弱者として認められたいというモチベーションが生まれる
フィリピン型
フィリピン型のメリット
- 福祉を受ける人が、他人との関わりを持ちやすいので、孤立しづらい
- 福祉を受ける段階で自分の立場を知るので、世代交代が進みやすい
- お金を払っている人が尊敬される
- お金を稼ぐためのモチベーションが生まれやすい
フィリピン型のデメリット
- 女性や子供の方が福祉を受けやすくなり、福祉に差が生じる
- 十分な福祉が全員に行き渡らない
まとめ
この記事では、寄付の回数から見えてくる、両国の再分配の方法を説明しました。
日本型とフィリピン型の特徴を理解してもらえたと思います。
日本型は弱者に優しく、お金を稼ぐ側の人達ばかりに負担がいく仕組みになっています。
日本に弱者が増えて、そして活気がなくなってきた理由がよくわかります。
同様に、「フィリピン社会は、人との関わりが煩わしくも心地よい」と言われる理由もよくわかります。
私達が再分配を任せたいのは、国なのか個人なのか、それとも家族なのかが問われています。
Good luck!
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