この記事は、林芙美子という作家による「愉快なる地図 台湾・樺太・パリへ」という本を参考にして書いています。
彼女が29歳頃に書いた本です。
時代は昭和7年、1932年の頃の話だ。
ちょうど、満州国が設立された年でもある。
日露戦争が終わったのが1905年なので、それから27年後の話。
太平洋戦争が始まったのが1941年なので、その9年前の話でもある。
彼女は、シベリア鉄道を通ってパリに行こうとするのだが、その中で、彼女の素直なソ連への感想が吐露されていた。
- ルーブルが不安定だから、日本円をチップとして与えた方が喜ばれる
- 列車の水は出ないし、鏡は壊れている
- ソ連は工業国なのに国民は貧乏。Why?
通貨はリアルに経済状況を現す。
当時、日本の国力が、ソ連の国力より優れていた事が、ハッキリとわかる。
さらには、こう続く
- 私が日本で知っていたロシアと現実のロシアは違う
- 何で、日本の共産主義者は、こんなロシアに憧れてるの?
- 日本の共産主義者は、ロシア革命に憧れてるの、嘘でしょ!
- ロシアでも、労働階級は、結局、労働階級だよ
- 逆に特権階級は、結局、特権階級なんだろうね
私は当時の日本の雰囲気を詳しくは知らないけれど、彼女の発言からするに、かなりソ連とロシア革命が美化されていたようだ。
朝日新聞辺りの影響だろうか?
それに対して、かなり皮肉った発言をしていることがわかる。
日本でもソ連でも、結局の所、労働階級は労働階級で、特権階級は特権階級という辺りは面白い。
最後には、ソビエト大使館は、東京でお茶会をしたけど、そこに招いたのは貴族階級で、労働者ではないよね。
Why?と述べている(笑)
ここからは、完全に自分の感想。
私の共産主義のイメージとは「ものすごい巨悪」というイメージだった。
なぜならば、様々なエピソードを聞いていたからだ。
- 共産主義者を弾圧するために治安維持法を作った
- あの昭和天皇が共産主義者を警戒していた
- 共産主義者である尾崎秀実が、首相の側近でスパイ活動をしていた
世界的に見ても、共産主義は凄まじい。
- ロシア革命を成功させて、ソ連を作った
- 中国共産党を作った
- ベトナム社会主義国を作った
- カンボジア共産党を作った
- キューバ革命を成功させた
共産主義によって虐殺された人達は、世界で1億人とも言われている。
共産主義は、多くの人達を虐殺し、飢餓に陥れた。
カンボジアでは、眼鏡をかけていたり、文字を書けるだけで、人が殺されたぐらいだ。
それらの歴史を踏まえた上で、現代に生きる我々は、共産主義が最凶のカルトであることを理解している。
でも、わずか29歳の林芙美子さんは、当時から、ソ連と共産主義に疑問を呈している。
ソ連と共産主義に胡散臭さを感じている。
もし、この感覚が世界に共有されていれば、歴史は良い方向に変わっていたかもしれない。
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