記事の内容
「富士通のリストラに関するニュース」と「NECのリストラに関するニュース」を見て、いよいよSierの没落が始まったなと思いました。
この記事では、没落の原因と考察、そしてこれからのSierが進むべき方向性について書いていきたいと思います。
ニュース自体の抜粋は、記事の下に書いておきます。
目次
富士通のニュースの危険なポイント
このニュースを見て、ヤバイなと思ったポイントがいくつかあります。
富士通の従業員は14万人なのに、間接部門に2万人もの人がいます。
およそ従業員の15%で、14人に2人は間接部門の社員ということになります。
効率化を目指すIT企業のわりには、ずいぶんと効率の悪い仕事をしているように見えます。
次に、配置転換をしてITサービスなどの成長分野を強化することができると思っていることです。
建前上、そう述べているだけかもしれませんが、本気だとしたら正気とは思えません。
ITエンジニアを育てるためには、若くて筋のいい人でも2、3年はかかります。
今までバックオフィスの業務をやってきた大人が、簡単になれるような職業ではありません。
配置転換したぐらいで、IT部門を強化できるならば、誰も苦労していません。
最後に、5,000人、間接部門の全従業員の25%にあたる人を配置転換するという点です。
そもそも、何でこんなに余剰な人員がいたのでしょうか?
正直、経営者に危機意識が無さすぎると思います。
追記;この記事を最初に書いたのは2018年の後半で、「この売上の落ち込み方では、さらに追加でリストラをしていくのではないか?」と予想をしていましたが、やっぱりそうなりましたね。
2019年のリストラでは、間接部門に限らず、全従業員が対象のようです。
2009年と2019年での富士通の情報を比較
2009年の富士通と今のデータを比較してみます。
富士通の従業員数のピークは2009年で、およそ17万人がいました。
2009年 | 2019年 | |
売上高 | 4兆6,000億円 | 3兆9,500億円 |
営業利益 | 950億円 | 1,300億円 |
従業員数 | 17万人 | 14万人 |
売上げは落ちていますが、営業利益は上がっています。
そして、従業員数は3万人も減っています。
従業員の一人辺りの年収が500万円だとすると、500万×3万人で、合計の出費は1,500億円です。
売上げが7,000億円も落ちているのに、営業利益が上がっているのは、従業員が3万人も減ったせいかもしれません。
参考までに2000年からの株価も貼っておきます。
2009年と2019年でのNECの情報を比較
次に2009年のNECと今のデータを比較してみます。
NECの従業員数のピークは2009年で、およそ14万人がいました。
2009年 | 2019年 | |
売上高 | 3兆5,800億円 | 2兆9,100億円 |
営業利益 | 500億円 | 585億円 |
従業員数 | 14万3千人 | 10万9千人 |
売上げは落ちていますが、営業利益は同じぐらいです。
そして、従業員数は3万人も減っています。
従業員の一人辺りの年収が500万円だとすると、500万×3万人で、合計の出費は1,500億円です。
売上げが7,500億円も落ちているのに、営業利益が同じなのは、従業員が3万人も減ったせいかもしれません。
こちらが2000年からの株価です。
2009年と2019年でのNTTデータの情報を比較
参考までに、他の有名なSier企業であるNTTデータの情報も記述しておきます。
2009年 | 2019年 | |
売上高 | 1兆1,390億円 | 2兆1,636億円 |
営業利益 | 985億円 | 1,477億円 |
従業員数 | ? | 12万3千人 |
NTTデータに関しては、順調に営業利益を伸ばしています。
ただし、「公共・社会基盤」の売上高が4,799億円で、金融の売上高が5,591億円です。
これから、大幅な伸び代があるとは思えません。
こちらが2000年からの株価です。
その間にAmazonは、どのように成長していたのか
最後にAmazonのデータを2009年と比較してみましょう。
2009年 | 2019年 | |
売上高 | 2兆5,000億円 | 25兆円 |
営業利益 | 1,000億円 | 1兆1,000億円 |
従業員数 | 2万4000人 | 56万人 |
売上げは10倍ほどになり、営業利益は11倍になっています。
従業員は20倍以上になっています。
ここ10年はIT業界の躍進の時代でしたが、それを体現しているのがAmazonだと言えます。
Amazonの本社があるアメリカのシアトルでは、Amazonで働く従業員が増えすぎたために、家賃が上がりすぎるという社会問題まで発生しているそうです。
こちらが2000年前後からの株価です。
これからの富士通とNEC、そしてSier
およそ10年前だと、富士通やNECは売上げにおいてAmazonに勝っていました。
ところが、今では逆転されて、途方もない差がついています。
IT業界がこれだけ成長している時代に、売上げが落ちている富士通やNECは、かなりの末期症状だと言えそうです。
また、2020/2月に政府は、Amazonが提供しているAWSというクラウドサービスを使うことを発表しました。
政府ですら、「国内のSierが提供しているサービス」を見限って「Amazonが提供しているサービス」を使い始めます。
このインパクトは大きく、今後は多くの企業がAmazonのAWSを使う方向に舵を切ることは明らかです。
その時には、Sierが提供してきた「粗悪で高価なサーバー運用サービス」が駆逐されていき、Sierの売上は大幅に落ちることになります。
また、データを見た感じだと、企業は営業利益を維持することを目的の一つとしています。
それはつまり、売上が落ちれば、人員をリストラするということを意味しています。
今後も、富士通とNECでは、リストラが続くことになりそうですね。
富士通やNECで働いている人は、かなりの危機感を持った方がよさそうです。
また、それは、その他のSierで働いている方にとっても同様かもしれません。
まとめ
Sierは、これからどうすべきなのか?
最後に、今後、Sierが生き残る方向についても考えてみたいと思います。
これから、GAFAを中心とした企業が、IT業界以外の領域も含めてシェアを広げていきます。
そして、それに対抗するべく、多くの日本企業はITの内製化を進めていくことになるでしょう。
なぜならば、ITの内製化を行うことによってPDCAのサイクルを高速に回すことこそが、GAFAに対抗できる唯一の手段だからです。
逆に言えば、ITの内製化を行わない企業は倒産するとも言えます。
ということは、今まで企業からITシステムの作成を請け負っていたSierの売上は落ちることになります。
その落ちる売上をカバーするためには、Sierはより専門領域に特化するしか、生き残る道はなさそうです。
いずれにせよ、将来的には、Sierの数は今より減っているはずです。
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Good luck with your engineer life!
富士通のニュース
富士通は26日、2020年度までにグループ全体で5,000人規模の配置転換を行うと発表した。
対象となるのは総務や経理などの間接部門で、研修を通じて営業職やシステムエンジニアとして育成する。
ITサービスなどの成長分野を強化する狙いがある。
富士通はグループ全体で間接部門に約2万人の従業員がいる。
富士通のニュース(2019/3/18に追記)
2019年1月末に締め切った間接部門従業員の割り増し給付金付き早期退職を含めた今後のジョブ選択を45歳以上の富士通グループ全従業員に拡大する
NECの発表
NECは、2020年度までの3カ年の中期経営計画「2020中期経営計画」において、成長軌道への回帰に必要な継続的な投資を実現すべく、抜本的な収益構造改革を進めています。
この一環として実施したNECグループにおける特別転進支援施策(希望退職の募集)を含む人財活用施策の結果、および照明事業の譲渡についてお知らせします。
これらの施策により、約3,000名の人員が減少する見込みです。
なお、これらの施策による収益の改善効果は、年度換算ベースで約240億円を見込んでいます。
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