記事の内容
「富士通のリストラに関するニュース」と「NECのリストラに関するニュース」を見て、いよいよSierの没落が始まったなと思いました。
この記事では、それらの企業の没落の原因と考察、そしてこれからのSierが進むべき方向性について書いていきたいと思います。
ニュース自体の抜粋は、記事の下に書いておきます。
目次
富士通のニュースの危険なポイント
富士通のヤバいニュースは3つあります。
(ニュースの内容は、記事の最後に記載しています。)
- 5,000人規模の配置転換(2018/10/27)
- 富士通グループ全従業員を対象にして、早期退職を促す(2019/3/18)
- グループ会社に所属する50歳以上で課長級以上の社員3031人をリストラ(2022/3/8)
最初のニュースを見て、ヤバイなと思ったポイントがいくつかあります。
富士通の従業員は14万人なのに、間接部門に2万人もの人がいます。
およそ従業員の15%で、14人に2人は間接部門の社員ということになります。
効率化を目指すIT企業のわりには、ずいぶんと効率の悪い仕事をしているように見えます。
次に、配置転換をしてITサービスなどの成長分野を強化することができると思っていることです。
建前上、そう述べているだけかもしれませんが、本気だとしたら正気とは思えません。
ITエンジニアを育てるためには、若くて筋のいい人でも2、3年はかかります。
今までバックオフィスの業務をやってきた大人が、簡単になれるような職業ではありません。
配置転換したぐらいで、IT部門を強化できるならば、誰も苦労していません。
最後に、5,000人、間接部門の全従業員の25%にあたる人を配置転換するという点です。
そもそも、何でこんなに余剰な人員がいたのでしょうか?
正直、経営者に危機意識が無さすぎると思います。
追記1
この記事を最初に書いたのは2018年の後半で、「この売上の落ち込み方では、さらに追加でリストラをしていくのではないか?」と予想をしていましたが、やっぱりそうなりましたね。
2019年のリストラでは、間接部門に限らず、全従業員が対象のようです。
追記2
2022年には、せっかく今まで育ててきた幹部社員を3,031人もリストラしています。
幹部社員とはいったい?という感じです。
30年近くも社員を育成してきた結果、社員をリストラとはあまりにも悲しい話です。
株価も売上も落ちているので、今後もリストラは継続して行われそうです。
2009年と2022年での富士通の情報を比較
2009年の富士通と今のデータを比較してみます。
富士通の従業員数のピークは2009年で、およそ17万人がいました。
2009年 | 2021年度 | |
売上高 | 4兆6,000億円 | 3兆6,300億円 |
営業利益 | 950億円 | 2,700億円 |
従業員数 | 17万人 | 12万6千人 |
売上げは落ちていますが、営業利益は上がっています。
そして、従業員数は4万人も減っています。
従業員の一人辺りの年収が500万円だとすると、500万×4万人で、合計の出費は2,000億円です。
売上げが1兆円も落ちているのに、営業利益が上がっているのは、従業員が4万人も減ったせいかもしれません。
参考までに2000年からの株価も貼っておきます。
2009年と2022年でのNECの情報を比較
次に2009年のNECと今のデータを比較してみます。
NECの従業員数のピークは2009年で、およそ14万人がいました。
2009年 | 2021年度 | |
売上高 | 3兆5,800億円 | 3兆円 |
営業利益 | 500億円 | 1600億円 |
従業員数 | 14万3千人 | 11万4千人 |
売上げは落ちていますが、営業利益は同じぐらいです。
そして、従業員数は3万人も減っています。
従業員の一人辺りの年収が500万円だとすると、500万×3万人で、合計の出費は1,500億円です。
売上げが6,000億円も落ちているのに、営業利益が増えているのは、従業員が3万人も減ったせいかもしれません。
こちらが2000年からの株価です。
2009年と2022年でのNTTデータの情報を比較
参考までに、他の有名なSier企業であるNTTデータの情報も記述しておきます。
2009年 | 2021年度 | |
売上高 | 1兆1,390億円 | 2兆5,000億円 |
営業利益 | 985億円 | 2,100億円 |
従業員数 | ? | 13万9千人 |
NTTデータに関しては、順調に営業利益を伸ばしています。
ただし、「公共・社会基盤」の売上高が5,500億円で、金融の売上高が6,200億円です。
これから、大幅な伸び代があるとは思えません。
こちらが2000年からの株価です。
その間にAmazonは、どのように成長していたのか
最後にAmazonのデータを2009年と比較してみましょう。
為替レートが関係するので、円での数字は日々、変動しています。
2009年 | 2021年度 | |
売上高 | 2兆5,000億円 | 54兆円 |
営業利益 | 1,000億円 | 4兆3,000億円 |
従業員数 | 2万4000人 | 全世界で130万人 |
売上げは25倍ほどになり、営業利益は40倍になっています。
従業員数は50倍になっています。
ここ10年はIT業界の躍進の時代でしたが、それを体現しているのがAmazonだと言えます。
Amazonの本社があるアメリカのシアトルでは、Amazonで働く従業員が増えすぎたために、家賃が上がりすぎるという社会問題まで発生しているそうです。
こちらが2000年前後からの株価です。
これからの富士通とNEC、そしてSier
およそ10年前だと、富士通やNECは売上げにおいてAmazonに勝っていました。
ところが、今では逆転されて、途方もない差がついています。
IT業界がこれだけ成長している時代にも関わらず、売上げが落ちている富士通やNECは、今後も伸び代がないことは間違いありません。
また、2020/2月に政府は、Amazonが提供しているAWSというクラウドサービスを使うことを発表しました。
政府ですら、「国内のSierが提供しているサービス」を見限って「Amazonが提供しているサービス」を使い始めます。
このインパクトは大きく、今後は多くの企業がAmazonのAWSを使う方向に舵を切ることは明らかです。
その時には、Sierが提供してきた「粗悪で高価なサーバー運用サービス」が駆逐されていき、Sierの売上は大幅に落ちることになるでしょう。
また、データを見た感じだと、企業は営業利益を維持することを目的の一つとしています。
それはつまり、売上が落ちれば、人員をリストラするということを意味しています。
今後も、富士通とNECでは、リストラが続くことになりそうですね。
富士通やNECで働いている人は、かなりの危機感を持った方がよさそうです。
また、それは、その他のSierで働いている方にとっても同様かもしれません。
まとめ
Sierは、これからどうすべきなのか?
最後に、今後、Sierが生き残る方向についても考えてみたいと思います。
これから、GAFAを中心とした企業が、IT業界以外の領域も含めてシェアを広げていきます。
そして、それに対抗するべく、多くの日本企業はITの内製化を進めていくことになるでしょう。
もしくは、Web3の方向に舵を切る企業も出てくるかもしれません。
なぜならば、ITの内製化やWeb3の方向に舵を切って、PDCAのサイクルを高速に回すことこそが、GAFAに対抗できる唯一の手段だからです。
逆に言えば、そういった方向に舵を切らない企業は倒産するとも言えます。
ということは、今まで企業からITシステムの作成を請け負っていたSierの売上は落ちることになります。
その落ちる売上をカバーするためには、Sierはより専門領域に特化するしか、生き残る道はなさそうです。
いずれにせよ、将来的には、Sierの数は今より減っているはずです。
その話をより詳しく知りたい人は、この本を読んでみて下さい。
この記事に興味を持たれた方には、この本をオススメしています。
様々な視点があり、非常に参考になりました。
▼ エンジニアの組織論に興味がある人には、この記事がおすすめです
▼ アジャイル開発に興味がある人には、この記事がおすすめです
▼ プロダクトマネジメントについて興味がある人は、この記事を読んで下さい
Sierを避けて転職したい人へ
dodaは女性の社員が多いせいか、親身に相談にのってくれます。
まだ経験が足りないと判断されたら、素直に「あなたには経験が足りないので、数年後に改めて相談に来て下さい」と言ってくれますし、転職のチャンスがありそうならば転職先を紹介してくれます。
もちろん、dodaの言うことが全て正しいとは限りませんが、このブログの情報と合わせて考えながら、最後は自分で納得のいく道を選んで下さい。
マイナビもオススメです。
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私の場合、今までの経験と今後の方向性を素直に伝えたら、かなり親身になって相談に乗ってくれました。
dodaと合わせて登録して、自分自身の目で比較して見ることをオススメします^^
ちなみに、外資系を狙いたい人にはエンワールドがオススメです。
転職エージェントを一社しか使ってはいけないというルールは特にありません。
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レバテックさんの「ITエンジニア転職白書2021」によると、過半数以上の人が転職をすることで、年収50万円以上も上がっているそうです。
Good luck with your engineer life!
富士通のニュース(2018/10/27)
富士通は26日、2020年度までにグループ全体で5,000人規模の配置転換を行うと発表した。
対象となるのは総務や経理などの間接部門で、研修を通じて営業職やシステムエンジニアとして育成する。
ITサービスなどの成長分野を強化する狙いがある。
富士通はグループ全体で間接部門に約2万人の従業員がいる。
富士通のニュース(2019/3/18に追記)
2019年1月末に締め切った間接部門従業員の割り増し給付金付き早期退職を含めた今後のジョブ選択を45歳以上の富士通グループ全従業員に拡大する
富士通のニュース(2022/3/8に追記)
富士通は、事業の見直しに合わせて募集していた早期退職で50歳以上の幹部社員3000人余りが退職すると発表しました。
発表によりますと、早期退職するのは本社と国内のグループ会社に所属する50歳以上で課長級以上の社員3031人で、国内の幹部社員のおよそ5分の1にあたるということです。
NECの発表
NECは、2020年度までの3カ年の中期経営計画「2020中期経営計画」において、成長軌道への回帰に必要な継続的な投資を実現すべく、抜本的な収益構造改革を進めています。
この一環として実施したNECグループにおける特別転進支援施策(希望退職の募集)を含む人財活用施策の結果、および照明事業の譲渡についてお知らせします。
これらの施策により、約3,000名の人員が減少する見込みです。
なお、これらの施策による収益の改善効果は、年度換算ベースで約240億円を見込んでいます。