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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語るのレビュー【書評】

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記事の内容


この記事では、「オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る」の紹介をします。
プログラマとしても超優秀で、台湾のデジタル担当政務委員でもあるオードリー・タン氏が、将来について何を考えているのかわかる一冊でした。

コロナ禍でも、台湾ではGDPがプラス

台湾ではコロナ禍になってからも、GDPがプラスだったんですね。
素晴らしいことです。
そのために、オードリーさんは様々な工夫をされたようですが、そんな中でも「手洗い」のような当たり前に当たり前の事を丁寧に説明しているのが、よかったです。
日本人ならば「知っていて当然」と思う人も多いかもしれませんが、「知らない人がいる」という前提で政策を進めているのは素晴らしいことです。

台湾は日常生活を維持しながら防疫に成功し、その結果として、コロナの逆境下にあっても、GDPのプラス成長を実現しました。

台湾の街中で、誰かに「なぜ石鹸で手を洗わなければならないか」と聞いてみてください。
聞かれた人は間違いなく、「石鹸で洗えば、ウイルスを洗い流せるから」と答えるでしょう。
水で洗うだけでは意味がなく、石鹸を使わなければ洗っていないのと同じであることを理解しているのです。

そして、手洗いのためにデジタルでやれることを行っています。
デジタルは社会の方向性を変えようとしているのではなく、同じ方向を向いていると本人は仰っています。

たとえば、台湾では手の洗い方を教える歌が作られました。
この歌をインターネットで拡散するために、デジタル技術を使って可愛いキャラクターを作るのは良い方法ですし、実際に可能なことです。

AIの目的は、人間の補佐

オードリー氏は、人間とAIの関係は、「人間とコンピュータ」の関係と同様だと語りかけています。
もしくは、「のび太とドラえもん」の関係だとも言っています。
囲碁や将棋でも、今やAIの方が強い時代ですが、それでも「人間が打つ囲碁」の人気が直ちに失われるということはありません。
人間が打ってこそ意味があるということなのでしょう。

私とコンピュータの関係は、ちょうどスティーブ・ジョブズの言った「精神的な自転車(BicycleofMind)」のようなものでした

これはツールである自転車のほうが人間より山登りが得意だという意味ではありません。
自転車に山登りをさせるのであれば、登山の意味が失われてしまいます。

価値観を変化させるべき

私は、これらの文章を読んで、目からウロコが落ちるような想いでした。
計算機がない時代だと、「計算ができる人」が重宝されていましたが、今はそういった計算は機械がやってくれますし、「計算ができる人」が重宝されることはありません。
そして、人間はより創造力が必要とされる何かをやっています。
これからAIが活用されるようになってしても、同じことが起きるのでしょう。

そして、「人と比べること」よりも「人と協力すること」に重きを置く考え方をした方が、幸せになれると語っています。

このように「創造力」の定義は日々変化し、機器は常に新しい素材を提供してくれます。
そのため、私たち自身の創造力の可能性もまた日々高まっているのです。

しかし、「機械にできることは機械に任せて、自分はより良い公共の価値を生み出すんだ」という考え方に変え、より価値の高い仕事に専念するようになれば、機械があなたの仕事の一部分あるいは大部分を肩代わりしたとしても、あなたは自分の仕事に満足することができるでしょう。
なぜなら、あなたの仕事の結果が、公共の方向を向いているからです。

隣の人よりも少し上手にできたことに達成感を求めるよりも、隣の人と協力して社会問題を解決することのほうが、私は喜びの度合いが大きいと思います。

もし人と比べることで達成感を求めていたら、ある日、機械のほうがあなたの十倍素晴らしくなっているかもしれません。
するとあなたは不快になるでしょう。

デジタルデバイドを解決するために

これだけITの進化が速い時代だと、IT化に取り残されていく人達が、どうしても現れてきます。
その問題を「デジタルデバイド」と呼んでいますが、その問題を解決するためには、プログラマー側が使用者側に寄り添う気持ちも大事だと言っています。

プログラマーが使用者の側に寄り添って考える創造力を養うことも大切です。
その手っ取り早い方法は、プログラムやアプリを開発するプログラマーを自分の設計したプログラムから最も縁遠いと思われる人たちの集団に送り込むことです。
そうすれば、「彼らが何を使えないのか、なぜ使いにくいのか」という感覚を明確に理解することができるでしょう。

プログラマーの住む場所が様々で、あるいは開発チームのメンバーが様々な年代によって構成され、異なる文化を持ち、出身も異なっていれば、ブレーンストーミングの際に多角的な意見が出され、自ずと各種の異なる需要にも応えなければならないでしょう。

傾聴の大事さ

様々な人から意見を聞くことで、未来を先取りすることができると、オードリー氏は述べています。
先住民の話は、非常に示唆深いですね。
私もセブに住んでいる海洋民族とたまに交流していますが、彼らの方が進んでいるなと思う面は多々、あります。

タイヤル族は私に、「平地に住む人たちは、先住民にも教育が必要だと言うけれど、自然の資源を無節制に使っている彼らにこそ教育が必要なのではないか。それでこそより優れた成果が得られるのではないか」と言いました。

私は他の人の話を聞くことが好きです。
それは純粋な興味からきています。今年(2020年)亡くなった李登輝元総統が、台湾の黒毛和牛やヨーロッパの牛を分析して、台湾でどう育てていくのかについて関心を持っていたのと同じく、私が政治的問題とは離れた事柄に関心を寄せるのは、単純な興味から出てくるものです。

一つは、「自分自身の生活という角度から物事を見る」という制限を取り払えることです。

二つ目は、相手の個人的な経験や背景から述べられたことを通じて、「世界はこのような視点でも解釈できると理解できる」ことです。

「傾聴」を実践することです。
人間にとって一番いいのは、みんながみんなの話を聞こうとする民主主義であり、「傾聴の民主主義」です。

原発には反対

日本では、フクシマの事故があってからも、原発の再稼働を訴える人達がいます。
そういう人達に、読んで欲しい内容です。
我々は、謙虚な気持ちを持って、そして次世代のことを考えながら、生きていくべきだと思います。

また、時には人間の故意ではなく、大震災などの天災によって原発が破損し放射能汚染が起きるというようなことがあり得るのです。

ところが、放射能汚染を目の当たりにすると、核が人智を超えた結果をもたらし得ることをまざまざと実感するのです。
こうした経験をもとに、私たちは謙虚、謙遜ということを学ぶのだと思います。

科学を理解したからといって、それで「物事のすべてを理解した」という傲慢さを持ってはいけないのです。
さらに言えば、短期的な利益にとらわれて大きなリスクとなるような冒険をしてはならないのです。
「次の世代にリスクを残すかどうか」を賭けの対象にして、わずかばかりの利益を得ようとするのは、あまりにも馬鹿げているように見えます。

異なる価値観に対する考え方

コロナ禍では、様々な考え方がありました。
特にアメリカと日本では、かなり違いがあったように思います。
そんな中でも、このような考え方は忘れないようにしたいものです。

たとえ自分は受け入れられないとしても、こうした異なった価値観や考え方があるということを知っておくことが、大事なのです。そういった知識がなければ、どんな考え方でも、それぞれのグループに属する人たちは、自分たちの振る舞いを自然なものだと思い、疑うことをしなくなるからです。

大学への進学について

台湾では、大学へはいつでも行けるそうです。
確かに惰性で大学に行っても、あまり効果があるようには思えません。
自分が学びたいと思った時に、大学に行くことが一番です。

台湾では、新しい指導要綱が作成された際に、高校三年生は卒業後に大学に進学せず、そのまま社会に出てもいいけれど、その後に何かを学びたいと思えば、再び大学進学の道に戻ることができるようになりました。
生涯学習というプロセスを考えると、いつでも大学に行くことができるようにしたのです。

「大学のどの学部で勉強すればいいのか」と聞かれたら、私はいつも「何を勉強したらいいのかわからないのであれば、まだ勉強を始めないほうがいい」と答えています。
自分が解決したい問題があれば、その問題に取り組めばよいですが、自分の方向性や問題が見つからない場合、大学に行っても何も役に立ちません。

寛容性

私は、日本に住んでいると息苦しさを感じることがあります。
そのせいか、このような台湾の話を聞くと、羨ましい気持ちになります。
日本は、もう少し寛容になってもいいのではないでしょうか?

たとえば、台北駅のコンコースの床には、たくさんのスマイル(笑顔)のイラストがかれ、たくさんの言語が書かれています。
これは「床に座り込むのがいけしからん」などと思わせないような配慮です。

現在、台湾はフィリピンやインドネシア、ベトナムなどからの出稼ぎ労働者72%を多数受け入れています。
多くの場合、男性は工事現場や工場などでの仕事、女性は介護やメイドなどの仕事に従事しています。
週末になると、彼らは交通至便でエアコンも効いている台北駅のコンコースに集まって座り込み、そこで故郷の食べ物を持ち寄っておしゃべりをするのが習慣でした。
しかし、新型コロナウイルス感染防止対策や「外国人が大量に集まっている光景は異様」という市民からのクレームがあり、鉄道局はいったんコンコースの座り込み禁止を決めました。
しかし、政府が永続的禁止の措置に待ったをかけ、抗議も相次いだため、鉄道局はコンコースの利用を認める方向に転じると同時に、前述したようなペイントを施したのです。

先人に対する感謝

今の日本では、自虐史観のせいか、先人の苦労を理解していない人達がほとんどです。
そして、今の価値観だけで過去の人達を裁いています。
私にはそれが異様に思えますが、オードリー氏もそのような捉え方をしているように思えます。

私は李登輝氏の言葉や先人たちの哲学的思考をよく引用して話をしますが、彼らは未開の地に道を切り拓いてくれた人たちなのです。
彼らがいたからこそ、私たちは考える時間を節約することができています。
先人が歩いた道が存在するからこそ、多くの人は「太陽が地球の周りを回っている」のをおかしいと感じ、「地球が太陽の周りを回っている」と言っても誰も不思議な顔をしないのです。

悪い民主主義と理想の民主主義について

オードリー氏が批判している民主主義は、まるで「日本の民主主義は意味がない」と言っているように、私には思えました。
その一方で、デジタル民主主義は、非常に素晴らしいように見えます。

一方、民主主義には多様な意見が存在するのが前提ですが、それが形式的なものにすぎない場合は大きな問題となります。
つまり、お上が言うことを庶民が付度して、「お上がAといえば、みんながA」になっているような状態です。
このような社会では、選挙制度があっても投票は形式的なものにすぎません。
このような民主主義であれば、まったく意味がないでしょう。

デジタル民主主義の根幹は、「政府と国民が双方的に議論できるようにしよう」ということです。
私は「国民の意見が伝わりにくい」とされる間接民主主義の弱点を、インターネットなどの力により、誰もが政治参加をしやすい環境に変えていこうとしているのです。

シルバー世代と若者世代の両方を大事にする

台湾では、シルバー世代と若者の関係が、日本よりは上手くいっているようです。
日本ではシルバー世代ばかりが得をしています。
日本政府にも、このような意見が広がって欲しいです。

この振興券を作るとき、若者と年配者が共同でアイデアを出す場がなければ、どちらか一方のやり方だけになって、残り半分は置き去りにされていたかもしれません。
これは絶対に看過できないことです。
重要なのは、「どうすれば、各世代が一緒に政策を作っていくことができるか」を考えることです。

台湾で教育や健康の話をすると、それは「誰も置き去りにしない」というインクルージョンの考え方につながっていきます。
インクルージョンとは「包括」という意味ですが、大多数の人たちがよければよいとするのではなく、理想としてはすべての人の利益になることを目指す考え方です。

経済学とは「既存の資源をどう分配するか」ではなく、「人々が協力してより多くの価値を生み出すためにはどうすればいいか」を考
えることであると言っています。

何かをしたい人へ

これから、起業したい人に向けた、素晴らしいメッセージです。

私の考えがたとえ個人的なもので物であっても、その内容を言語で明確に説明することができれば、同じ考えを持った人に必ずめぐり会うことができる。
すると、私が考えたり説明したりしたことは、単なる個人的な考えではなく、公共性のある考えになり、同じ与えや感覚を持つ人が「どうすれば、よりよい生活を送れるか」をともに考えるきっかけになる。

「起業したい」と言うのは「社会を変えたい」と言っているのと同じことなのです。

もし、あなたが何かの不正義や注目が集まっていないことに対し、怒りや焦りを感じているのなら、それを建設的なエネルギーに変えてみて下さい。
そして自問自答してください。
「こんな不正義が起こらないために、私は社会に対して何ができるだろうか」と。

まとめ

オードリー・タン氏の文章は、高度なレベルの内容を話している割には、非常にわかりやすかったです。
でも、オードリー氏の発言は、特別に奇抜な発想というわけではありません。
私には、当たり前の事を当たり前に説明しているように思えました。
そして、その「当たり前であるべき事」の多くは、今の日本からは失われつつあります。
この本を読んで、改めて今の日本の在り方を考えるべきではないでしょうか?

以下の5つをどのような形でまとめるのかが、鍵のように思います。

  • 伝統
  • 謙虚
  • 寛容性
  • 合理性
  • インクルージョン

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