記事の内容
日本人の価値観で、「給料の話にはあまり触れないようにしよう」というものがあります。
私はそういった価値観を理解できますし、給料を公開するデメリットもわかります。
でも、それ以上にメリットもあるので、エンジニアは給料の話をオープンにした方がいいと思います。
この記事では、私がそう思う理由を説明します。
バズった2つのツイート
一見すると2つのツイートは相反するように見えるかもしれませんが、それは私の意図するところではありません。
両方とも正しいと思います。
「いくら稼いだ」「月収○○万!」とお金を武器にして集めた人たちは、あなたの生き様ではなくあなたの"お金"に魅力を感じている。
価値観の共有ではなくお金を稼ぐ方法だけを知るために集まった人たちと、本当に良い人間関係が築けるだろうか?— あんちゃ/執筆屋 (@annin_book) October 19, 2018
給料の話は、半分ぐらいは同意。ただ、Web業界はエンジニア同士が給料をオープンにして話し出したことで、給料が上がり始めたんだよね。「お互いの給料を把握する→俺は不当に安い→転職する」という流れ。「いくら稼いでます」って言うことは、大事なことでもある。
— フリーダイビング・エンジニア(ジョージ) (@monkey_d_george) October 20, 2018
あんちゃさんが言いたいこと
あんちゃさんが言っていることは、真っ当だと思います。
ブロガーが「月収100万を稼いでいる」と発言をすれば、お金が目当てで寄ってくる人達もいるはずです。
しかも、それがブロガーのように、誰にでもやれそうな職業であればなおさらです。
悪い人達や調子のいい人達が周りに集まってきて、発信者の人生が狂わされてしまうかもしれません。
そういった意味では、無邪気に稼いでいる額を発信することにはデメリットもあります。
従来の日本の価値観
それとは別の話で、従来の日本の価値観にも、「お金のことはあまり気にしないでおこう」というものがあります。
「人間尊重」で有名な出光は、家族主義を掲げています。
それは「終身雇用」や「年功序列」と結びつくもので、会社は社員がお金を必要になるタイミング(年齢)で、それ相応のお金を支給するという考え方です。
またZOZOTOWNの従業員は、役職ごとで社員の給料が一律だそうです。
このような二社の考え方は、素晴らしいと思います。
おそらくは、下記のような考え方だと思います。
家族主義の考え方
- 社員がお金のことばかりを考えるのは生産的ではない。
- 社員同士が足の引っ張り合いをすることを止めさせたい。
- 会社は社員が生活するのに十分な給料を払う。
ただし、家族主義が悪用されると、ただの「やり甲斐搾取」になってしまいます。
つまり、会社は十分な給料を払わないということです。
私は、そういった会社を何社も見てきました。
そのため、できるだけ、そういった会社をなくしたいと思っています。
IT業界で横行している「やり甲斐搾取」
2012年頃までのIT業界は、やり甲斐搾取が横行していました。
エンジニアの多重派遣が平然と行なわれて、エンジニアは十分な給料を貰えませんでした。
ちなみに、多重派遣は立派な違法行為です。
また、会社が上場をしても、従業員にはストックオプションを与えずに社長だけが大金持ちになるというのも、何度か耳にした話です。
これは違法行為ではありませんが、社員からしたらバカバカしい話です。
そういった搾取構造が長く続いてきたせいで、日本のIT業界からはエンジニアがいなくなっていきました。
努力をしてエンジニアになっているのに、十分な対価が貰えないのならば、エンジニアを辞めるのは当然の話です。
それが、今のエンジニア不足の一因です。
そう考えると、一部の人達が得をしただけで、それ以外の多くの会社や社員が損をしたことになります。
エンジニア不足は、今、多くの会社を苦しめています。
一方で、アメリカのシリコンバレーでは、IT業界に限っていえば富の分配がうまくいっています。
そのためエンジニアは高給ですし、ストックオプションで大金を稼いだ人達も沢山います。
そのお金が回りに回ることが、アメリカのIT業界や社会の隆盛につながっています。
エンジニアには給料を発信して欲しい
上記のような悪い状況が改善され始めたのが、2013年頃からです。
一部の会社が高給でエンジニアを採用するようになりました。
そして、会社がエンジニアの待遇を発表するようになったのもこの頃です。
また、エンジニア同士が集まると、以下のように、会社の待遇について話すようになりました。
エンジニア同士の情報交換
- 大手のA社は給料が低い
- B社は、新卒が入社してから2年間は給料が上がらない
- C社の新卒は700万
- D社はストックオプションを配っている
- E社は好待遇で人を集めている
- 転職したら、年収が100万円以上はあがった
その結果として、Web業界では2つのムーブメントが起こりました。
2つのムーブメント
- 他人に比べて給料が安いと感じたエンジニアは、転職をして年収アップを目指すようになった。
- 中間マージンを多く取られてすぎていると感じたエンジニアは、独立してフリーランスになった。
こうした状況を受けて、会社側はウカウカとしていられなくなりました。
放っておけば、会社からのエンジニアの流出が著しくなり、サービスの存続が立ち行かなくなるからです。
そうして、エンジニアの待遇は改善されるようになってきました。
2019年の2月には、GMOペパボで、エンジニアの年収が一律で200万円もアップしたことが話題になりましたね!
今では、学生エンジニアでも腕さえあれば、時給3,000円ぐらい稼ぐ人もいます。
月収だと50万円ぐらいです。
新卒エンジニアで、「新卒として就職したら、普通に給料が下がったし、来年以降の昇給も望めなかった」と言っていた人を知っています。
もちろん、その新卒エンジニアは入社して1年以内には転職をしました。
経営者側からすれば、今の状況は好ましくないはずです。
できれば、自分の会社だけは、「技術力のあるエンジニアを安く雇いたい」というのが本音でしょう。
でも、エンジニア同士が条件をオープンにしていれば、そのような「やり甲斐搾取」はできなくなります。
文系出身で大した勉強もせずに、年功序列というだけで年収1,000万円以上を貰っている人達はいくらでもいます。
エンジニアも、もっと自分の待遇を主張すべきでしょう。
エンジニアが待遇をオープンにしていくことで好待遇を勝ち取り、最終的にはアメリカのようなIT業界の生態系を作っていければと思います。
Good luck for your engineer life!
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