実際のところ、どうなんでしょうか?
記事の内容
エンジニアは報われないというのは、実際のところ、あるかもしれません。
それでも、最近は状況が変わってきました。
この記事では、エンジニアが報われづらかった過去と、最近の状況を説明したいと思います。
目次
一般的な技術者の待遇は普通でした(過去)
Web業界に限らず、幅広い意味でのエンジニアリングの世界では、技術者の待遇は普通だった気がします。
その背景には、経営者の「技術者は好きな仕事をしているから、特別に給料を高くする必要はない」という思想があったように思えます。
そして、技術者も、「好きな仕事をしているし、普通に生活できるなら、それでいいや」と思っていたフシがあります。
高度経済成長の時代は、会社の業績が右肩上がりで技術者の給料もあがっていたので、それで上手くいっていました。
また、会社は終身雇用をうたっていたので、技術者も「会社が一生、面倒を見てくれるなら、それでいいや」と思っていたようです。
「技術者が報われない話」では、青色REDでノーベル賞をとった中村さんが有名です。
でも、実際のところ、中村さんが報われてないとも言い切れません。
彼には、青REDの開発が成功する前から、アメリカへの留学費用と8億円の予算が認められています。
また、年収も2,000万ぐらいには達していたと聞くので、かなり厚遇されている方でしょう。
中村さんの功績は大したものですが、日亜化学が中村さんに投資した姿勢も立派だと思います。
中村氏の「異能・異才」を日亜化学の中で唯一評価していた小川氏は、「オーケー。
やっていい」と即答。
「開発費はいくらかかる?」との質問に「500万ドルが必要だ」と答える中村氏に対し、「ええわ、やれ」と一言で返答したという。
当時、為替レートは急激な円高が進んでおり、500万ドルは8億円に相当する。
中小企業の日亜化学には大変な金額だ。
これにより500万ドルの研究費支出と米国留学が認められ、青色LEDが陽の目を見ることになる。
この話しをもう少し詳しく知りたいという方は、こちらの本を読んでみて下さい。
プログラマは報われていませんでした(過去)
話は変わって、SierとWeb業界では、プログラマは本当に報われてきませんでした。
多重下請け構造による搾取のせいで、プログラマの待遇は普通どころか、他の職種より悪い場合もありました。
IT業界には、3Kという言葉があります。
「キツイ」「給料が安い」「帰れない」を意味するそうです。
営業などの職種に比べて、確かな知識が求められる業界なのに、給料は営業より安いという不可思議な状況だったのがIT業界です。
その傾向は緩和され始めたとはいえ、以前として残っていることは間違いありません。
エンジニアが花形になりつつある世界(未来)
最近は、一般的な技術者やIT業界に関わらず、エンジニアの地位が向上していきています。
なぜならば、クラウドとスマートフォンで使われている技術が、相互に影響しあった結果、技術力がビジネスの成功を大きく左右するようになってきたからです。
クラウドやスマートフォンで使われている技術は多岐にわたります。
スマートフォンとそれに乗っかっているアプリには、以下のような技術が使われています。
スマホに使われている技術
- 蓄電技術(スマホのバッテリー)
- 充電技術(ワイヤレス充電)
- 通信技術(AirPod、無線LAN)
- ディスプレイ性能
- メモリ
- CPU
- UI/UX
- プログラミング
クラウド環境の場合は、以下のような技術が使われています。
クラウド環境に使われている技術
- 効率的な発電(太陽光発電、極寒地域での発電)
- メモリ
- ストレージ
- CPU
- GPU(画像認識)
私が知っている限りの技術を並べましたが、他にも様々な技術が使われています。
ここで言いたいことは、使われている技術のことではなく、技術の垣根が無くなりつつあるということです。
そして、それらの技術が、さらに業界の垣根をなくしつつあります。
これからは、強力なクラウド環境を利用したディープラーニング、AI、画像認識が一般的になっていきます。
その技術は自動運転や、無人のコンビニを可能にするはずです。
こういった状況なので、一部の企業は、「企業の競争力の源泉は技術力」だと気付いています。
Google、Amazon、Appleはプログラミングの技術者だけでなく、様々な分野での一流の技術者を雇っています。
彼らにとっては、発電の効率を上げるだけでも、大幅に利益が変わってきます。
ワイヤレス充電は、クールな製品作りに貢献します。
そのため、エンジニアの待遇はよくなっています。
ただ、それでも、エンジニアの努力に比べて、待遇が満足いくものかと言われると、そうとは言い切れません。
特に日本企業で働くエンジニアの待遇は、あまり良くありません。
時代の変化についていけない人事制度(現在進行系)
2000年頃には、インターネットは、まだまだ一般的ではありませんでした。
Google、Amazon、Facebookなどが、まだまだ有名ではなかった時代です。
その後に、技術や産業の変化の流れが加速しました。
インターネット、スマートフォン、クラウドといったものが、ものすごい勢いで世界を変えているからです。
iPhoneが流行り始めたのは、2010年頃ぐらいでした。
それから、スマートフォンは爆発的に普及しています。
その影響で、ビジネスを取り巻く環境は大きく変わりました。
一時は世界のトップ企業だったノキアでさえも、スマホへの変化に乗り遅れ、携帯電話事業は売却、リストラされました。
ブラックベリーは、一時的には流行りましたが、今は話すらも聞きません。
シャープも一時は大きな利益を上げましたが、今や鴻海に買収されてしまいました。
これらの事実は、技術者の持っている価値のある技術力の陳腐化も早くなったということを意味しています。
新しいことを勉強をしない技術者が、お金を稼げる期間は、プロ野球やプロサッカー選手と同様になってきているということです。
そんな中で、技術者がより多くのお金を望むのは当然と言えます。
ただ、残念なことに日本企業の人事制度は大して変わっていません。
それはつまり、一時的に価値のある技術者には大してお金を払わずに、その技術の価値がなくなれば、技術者をリストラをするという意味になります。
でも、諸外国は違います。
彼らは、いち早く技術者の重要度に気付いていました。
その結果、一部の技術者は、中国、台湾、韓国に流れたと聞いています。
日本の横並びの給与制度が変わらない限りは、今後もこの傾向は続くはずです。
ただし、2019年の時点では人事制度の変化も見られつつあります。
NTTデータがAdvanced Professionalを発表しました。
ADP制度は、AI、IoT、クラウドなど先進技術領域やコンサルティングの領域において卓越した専門性を有した人材を外部から市場価値に応じた報酬で採用する仕組みであり、新しいビジネスの推進において必要となる人材の確保を強化するものです。
また、GMOペパボがエンジニアの年収を一律で200万円アップしました。
企業がエンジニア採用に焦りを感じているせいか、人事制度が少しづつ変化していることがわかります。
日本企業の人事制度については、こちらの本を読むと理解が深まります。
変わりつつある業界と個人の戦略(現在進行系)
先程も少し書きましたが、一部の日本の企業は「企業の競争力の源泉は技術力」だと気付き始めています。
そのため、都内を中心として、エンジニアの待遇は上がってきています。
少しできるエンジニアだと、年収600万円以上や月収80万円以上の案件は普通に見るようになりました。
ただ、それでも、エンジニアが一つの会社に勤めていて勝手に給料が上がっていくということはありません。
エンジニアが今の待遇に不満を示して転職をした時に、初めて給料が上がります。
転職した時には、年収が100万上がるという話が当たり前になっているようです。
待っていても、日本の企業は、人事制度をなかなか変えることはできません。
人事にとって、他部署の利益になることは、大して優先度が高くないからです。
そんな中で、個人ができることは2つだけです。
一つは、常に新しい技術を覚えて、自分の技術者生命を長くするということです。
もう一つは、戦略的に転職をして年収を上げることです。
この2つをやれば、多少は満足のゆく待遇になるはずです。
Good luck for your engineer life!
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