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イギリスの最低賃金労働の現場で起きていること【書評】

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記事の内容


この記事では、「アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~」を読んだ感想について書いていきたいと思います。
これから多くの移民と生活を共にする日本人にとっては、必読の書かもしれません。

移民が、別の国の移民を嫌う

東欧のルーマニアから、一ヶ月だけアマゾンで働く予定でイギリスに来た女性は、このように述べています。

しかし得た仕事も、住むことになった街
――バーミンガム――も、彼女が思い描いていた英国像とはかけ離れたものだった。
「住人も大嫌い。汚い街も大嫌いだし、仕事も大嫌い……この国が好きじゃないの……
とにかく、インド人が多すぎる。
どこに行っても、インド人ばっかり!」

移民同士でも、国籍が違えばお互いに嫌い合うことは十分に起こることです。
これは将来的に、日本でも起こり得ます。
将来の日本では、中国人、韓国人、ベトナム人、インド人などが嫌い合っているのかもしれません。

母国よりはイギリスで働く方がマシ

ルーマニア国内で働く人の手取りの月給は、413ポンド(62,000円)です。
でも、彼らがイギリスで働けば、4日で240ポンド(36,000円)を手にすることができます。
それをルーマニア人は、このように表現しています。

ここで動物のように働くこともできます。
4日間働けば、240ポンドを手にできる。
ここでは、ぼくはただのつまらない人間です。
でもルーマニアに戻ったら、ぼくは食事代もないつまらない人間になるんです。

私は、似たような話を、日本に住むベトナム人から聞いたことがあります。
「スタバで、一杯のコーヒーを飲むために、ベトナムでは数時間は働かないといけない」
日本で時給800円で働くことは、決していい条件とは言えません。
でも、途上国から来ている外国人の中には、「本国にいるよりはマシ」と考える人も少なくないはずです。

Amazonは、倉庫で働く人を奴隷のように管理する

腕におかしな機械をつけられて、歩数までチェックされている

トイレは1階にしかなく、この巨大な建物の最上階で働く私たちのグループのメンバーは、4階分の階段を下りないとトイレにたどり着くことができなかった。
私は一度、クリスマス用の装飾セットの箱の横に、淡黄色の液体が入ったペットボトルが置かれているのを見つけたことがあった。

歩数すらもチェックされて、小便すらも満足に行くことができない環境は、人間が働くところだとは思えません。
ただし、良くも悪くも、こういった作業はロボットがやり始めているので、将来的には、人間がこのような作業をやることは無くなるはずです。
それは同時に、労働者が失業することも意味します。

Amazonでの仕事には、誇りを持てない

みんな『アマゾンでちょっと働いているだけ』って言うんだ。
むかし、『炭鉱でちょっと働いているだけ』なんて言う人間はいなかった」とアレックスは言った。
「誰もが『おれは炭坑夫だ』と堂々と言っていた。
それがおれたちの職業であり、誇りをもって働いていたんだ」

もう一つ忘れてはいけないのは、アマゾンの仕事では、家を買ったり、家族を養ったりはできないということだ。

給料が安く、女性でもできて、危険性がない仕事に対しては、多くの男性は誇りを感じることはできません。
イギリス人にとっては、炭鉱夫として働いていた頃の方が、やり甲斐を感じられたようです。

これは、すでに日本でも起きている現象です。
「黒部の太陽」で、労働者が命を懸けて黒部ダムを作る様は、多くの人を感動させました。
「あれこそが、男の仕事だ」と思う人は、今でも少なくないはずです。
危険な分、高給を稼げる仕事は、今ではほとんど無くなってしまいました。

自由のつもりでも、企業の掌の上かもしれない

経済の多くの領域で利益率が低下するなか、企業は彼らが従業員ではないとうまく見せかけることによってコストを抑えてきたのではないか?
かつて固定給と所定の労働時間という枠組みのなかで行なわれていた仕事
――労働者に最低賃金、有給休暇、雇用契約が与えられる仕事――
がいまでは、そのような恩恵を受けられない「自営の請負人」として分類される人々に委ねられるケースがどんどん増えていった。

日本では、最近、フリーランスが礼賛され始め、ランサーズやクラウドワークスといった会社を利用してお金を稼いでいる人が多くいます。
ある人は、その働き方を「自由の象徴」かのように表現していますが、実はそれは企業の思惑通りなのかもしれません。
つまり、企業側からすれば、そういった働き方は、ただのコストカットという可能性なのかもしれません。

ギグ・エコノミーは、労働者にとっても魅力的になりうる

ギグエコノミーとは、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態のことをいいます。
具体的に言えば、Uber、Grab、ランサーズといったもので、回る経済形態のことです。

利便性が向上するのはもちろんのこと、そのようなサービスは内容がどんなものであれ、ほぼ確実に伝統的なサービスよりもずっと安い。
たとえばウェストミンスター寺院からバービカン・センターまで行くには、ブラックキャブでは15ポンドほどかかるが、ウーバーを使えば8ポンドでいける。
是非を決める議論で忘れられがちなのは、ギグ・エコノミーは(少なくとも理論的には)労働者にとって魅力的な提案にもなりうるということだ。

ギグエコノミーは素晴らしい一面がある一方で、労働者側次第では、搾取構造になることは間違いありません。
フリーランスで働く人は、常にダンピングに応じない心構えが必要です。

拡大する資本主義

アマゾンとやらは何を与えてくれた?
今日、誰かが私にこう言ったよ。
資本主義は借金の上に成り立っているってね。
アマゾンの倉庫のような場所で仕事をしたくないから、若者は奨学金をもらって大学に行き、卒業と同時に3万ポンドの借金を抱えるようになる。
これも資本主義への燃料供給だ。
分割払いで車を買うのも、資本主義への燃料供給。
そうやって社会は生き残っていく。
いまでは家が買えないから、多くの人が親と同居するようになった。
公営住宅なんてもうないからね。

同様のことは、すでに日本でも起きています。
少なくない大学生が、卒業と同時に数百万円の借金を背負っています。
「資本主義」と呼ばれるているものは、本当に世の中を良くしているのでしょうか?
私は、特に学歴というものに対しては、かなり懐疑的です。
数百万円の借金をするだけの価値に見合っているようには、とても見えません。

能力主義は人類を幸せにしているのか?

能力主義を是とする信念が広く浸透している世界では、ヤギからヒツジを選り分けるのはおもに政治家の仕事となる。
すると、ある人物がひたすら惨めな仕事を続ける羽目になっても、問題視されることなく受け容れられ、その人物にはそれ以上の能力がなかっただけだと判断されてしまう。

今の先進国で、唯一、許されている差別は、能力に基づく差別だと言われています。
男女差別、年齢差別、宗教の差別などは、少なくとも建前上は許されていません。
「今の世の中の物差しで測られる能力」による差別は、本当に正しいのかは、誰にもわかりません。
一昔前の日本であれば、「手先が器用な職人さんの能力が素晴らしい」とされていましたが、今ではそんなこともありません。
時代時代で、人が持つ能力によって、人の価値が変わるというのは、よくよく考えてみると、おかしな話です。

まとめ

この記事では、イギリスの最低賃金で働く人達から見た社会を紹介しました。
これから、日本には多くの移民が来ると言われています。
イギリスで起こったことと、全く同じことが日本で起こるとは限りませんが、この本に書かれている現実は、多くの日本人に知っておいて欲しい内容です。
この本を読むことが、移民問題と資本主義について考えるキッカケになれば幸いです。

Good luck!

この記事は、この本を参考にして書きました。

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